長下肢装具(両側支柱付)は、支柱、大腿カフ、膝継手、膝あて、下腿カフ、足継手、足部、あぶみなど、多くのパーツで構成されています。
特に「膝継手」「足継手」「足部」の仕様は、装具の使用目的に直結する重要な要素です。
また、フレアヒールやサッチヒールといった「靴底の加工」も、機能に大きな影響を与えます。
そこで今回は、私が現場でよく製作する長下肢装具(両側支柱付)の仕様をまとめてみました。
細かい解説は抜きにして、「どんな選択肢があるのか」をパッと確認できる逆引きガイドです。 設計の参考になるよう、基本仕様と追加仕様に分けて情報を整理しています。
長下肢装具の主な構成要素
長下肢装具(両側支柱付)は、主に以下のパーツで構成されています。
- 支柱
- 大腿カフ
- 膝継手
- 膝あて
- 下腿カフ
- 足継手
- 足部
- あぶみ
装具の設計においては、まず基本的な構成要素である「膝継手・足継手・足部・あぶみ」の仕様を決定します。 その後に、膝あてや各種ストラップなどの追加仕様を選択していく流れになります。
基本仕様
まずは、装具の骨格となる主要パーツの選択肢です。
1.膝継手
膝関節の屈曲・伸展をコントロールする部品です。よく使用する3つのタイプを紹介します。
リングロック
特徴: 最もシンプルな機構です。
機能: ロック機構を上下させることで、膝関節の「固定」と「遊動」を切り替えます。
ダイヤルロック
特徴: ロックをしたままネジを外して調整可能です。
機能: 膝関節の屈曲角度を設定でき、膝を曲げたままロックすることができます。
用途: 膝関節に屈曲拘縮がある場合に使用します。
SPEX
特徴: 膝関節の軽度屈曲の再現と、伸展補助機能を持っています。
機能:
- 伸展補助: バネの力で行います。
- 可動域: 一定の角度「まで」膝関節を曲げることが可能です。
用途: 伸展補助と軽度の屈伸可動性により、立脚初期に見られる軽度の膝屈曲を再現できます。
補足:バネをロッドに変えれば、ダイヤルロックのように任意の角度で固定することも可能。
2 足継手
足関節の底屈・背屈をコントロールする部品です。
ダブルクレンザック(Wクレンザック)(通称)
機能: 足関節の底屈・背屈について、以下の4つの状態(固定・制限・制動・遊動)に切り替えることができます。
調整方法: ロッドとバネを入れ替えて調整します。
なし: ロッド・バネを使用しない方向は「遊動」
ロッド: 差し込むと「制限」
バネ: 差し込むと「制動」
補足:米式や強バネタイプといった、芯材と太いバネで強い制動力を持った製品もあります。ただし、制動力の調整は芯材の抜き差しのみです。
底屈制動についてはこちらの記事でも解説しています。
GS+ダブルクレンザック
機能: ダブルクレンザックの機能に加え、ゲイトソリューション(GS)による「油圧での底屈制動」が可能です。
特徴:
バネよりも強力かつ調整可能な制動力を発揮します。
ダブルクレンザック側をロッドで固定すれば、制限をかけることも可能です。
単独仕様よりも多くの状況に対応できますが、価格は上昇します。
足継ぎ手の用語解説については、この記事で解説しています。
3.足部
文字通り足が入る部分です。「靴型(屋外用)」と「足部覆い(屋内用)」に大別されます。
靴型
屋外での使用に向いています。短靴かチャッカ靴で製作することが多いです。
短靴かチャッカ靴かは、アッパーの高さ(足を覆う量)で決まります。
短靴
一般的な靴。特に理由がなければ選択するケースが多いです。
チャッカ靴
短靴よりもアッパーが高く、足が多く覆われています。
インソールで1cm以上補高をする場合、短靴ではなくチャッカ靴で製作することが多いです。
また、内反尖足がある場合には後述する、足抑えベルトやT・Yストラップと併用するケースが多いです。
足部覆い(トゥーオープン型)
靴型との一番の違いはつま先の形状です。
特徴: つま先部分が開いています。
メリット: 靴型に比べて装着が容易です。アッパーの高さはチャッカ靴と同形状で、インソールによる補高にも向いています。
注意: つま先が開いているため、屋外での使用には向きません。
あぶみ
足長や用途によって、金属部分の長さを選択します。前足部の支持力に関与します。
※ここでは説明の都合上「ロングシャンク」「ショートシャンク」と分けていますが、実際に製品区分があるわけではありません。足長や目的によって該当する部品を選択します
ロングシャンク
装具内で足部が底屈するのを防ぐことを目的に選択します。
ショートシャンク
装具内で足部が底屈することを考慮しない場合や、軽量化したい場合、足長が短くロングシャンクに該当する部品が使えない場合に選択します。
追加仕様
各種ストラップ
T/Yストラップ
足関節の内反や外反を矯正するためのストラップです。
足背バンド
尖足を矯正するバンドで、足関節の底屈を抑えます。
靴底の加工
膝折れ防止目的や、接地面積、支持基底面を広げる際に加工を施します。
サッチヒール
靴底の踵部分を他の靴底よりも柔らかい素材に一部変更します。
通常の靴底よりも踵設置時に靴底が沈み込みます。結果、膝の軸にモーメントが近づくため、膝折れを防止しやすくなります。GSや底屈制動機能を持った足継手を使用する場合は使用しないことが多いです。(二重に底屈制動がかかってしまうイメージです)
フレアヒール
ヒールを横方向に延長し、足の接地面積を広げます。支持したい方向に靴底を延長します。
膝あて
膝関節コントロールのために使用されます。
膝折れ防止用
膝を前方から押し込み、膝を伸展位に保つために使用されます。
反張防止用
膝を後方から押し込み、反張膝がでてしまう場合に使用します。
内外反防止用
X脚やO脚の矯正に使用されます。膝関節に変形があり、支柱に触れてしまう場合に使用します。
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今回ご紹介した「膝継手」や「足部」などを選択するだけで、概算の公定価格(令和7年4月改定対応)がパッとわかります。 スマホでも使いやすいので、ぜひ仕様決めの参考にしてください。
まとめ
長下肢装具の基本仕様について、簡単に解説しました。
今回ご紹介したのは、あくまで私が現場でよく製作する「よくある仕様」です。 装具は完全なオーダーメイド製品なので、実際には星の数ほどの仕様が存在します。
ですが、現場での「共通言語」になりそうなポイントは解説できたのではないかと思います。 今回の記事が、長下肢装具の仕様を決定する際に、少しでもお役に立てば幸いです。
治療用装具として制作する場合の保険の申請方法はこちらの記事でも
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