底屈制動とは?KAFOの足継手における底屈制動――研究報告と実際に使える継手一覧

こんにちは、イカPOです。
今回は 「長下肢装具(KAFO)の足継手における底屈制動」 について取り上げます。


きっかけはXポストと論文

Xで次のような投稿を見かけました。

長下肢装具の足継手の底屈制動機能の違いが歩行に与える影響を調べた文献です。足関節の底屈方向への動きを強く制限するほど、前脛骨筋の活動が低下することが報告されています。患者様の状態にもよりますが、可能な限り制限から制動へ移行していくことが望ましいと考えられます。
引用元ポスト

この投稿の元になっているのは、川副ほか(2022)の論文です。

📄 長下肢装具の足継手の底屈制動機能の違いが脳卒中片麻痺患者の歩行に与える影響(J-STAGE)


論文のざっくりまとめ

  • 足継手を「固定(底屈制限)」にすると、前脛骨筋の筋活動が落ちやすい
  • 「底屈制動(ブレーキをかけながら動く)」の方が、筋活動が保たれる
  • KAFO歩行を行う際には、足継手の機能の違いに配慮する必要がある

さらに詳細な結果では、底屈制動タイプ(KAFO-PR)は底屈制限タイプ(KAFO-PS)に比べて、

  • 荷重応答期の前脛骨筋活動が大きい
  • 単脚支持期が長い
  • 前遊脚期の股関節伸展角度が大きい

という特徴が示されています。


底屈制動とは?

底屈制動とは、足関節が一気に底屈しないように、動きを“ブレーキ”しながらゆっくり下げる仕組みです。

なお、『装具学 第4版』では次のように説明されています。

「制動とは」継手そのものの分類ではなく概念。動きと逆方向に力を発揮し、ブレーキをかけながら動かす。主として踵接地後の底屈をコントロールする際の抵抗を指す。

👉 足継手の他の機能や用語解説についてはこちらの記事もご覧ください。


底屈制動ができる足継手の種類

1. GS(ゲイトソリューション)

GS+Wクレンザック
GS+Wクレンザックの使用例
  • 油圧で底屈制動を実現する「王道」の継手
  • 無段階で制動力を調整できる
  • K-215(ダブルクレンザック)と組み合わせると固定も可能

👉 「GSって装具の名前?」と思う方もいますが、正しくは足継手の名称です。


2. Wクレンザックのバネタイプ

ロッドを入れると固定。バネをいれるとその方向が制動になる。
  • 底屈方向にバネを入れることで制動を実現
  • 強い制動力を持つ代表型番:
    • 敬愛(株)K-215-0
    • 小原工業(株)8A-001
  • 芯材の有無で制動力を調整可能

実際の構成部品は以下のようになっています。

Wクレンザック継手のバネ部品
Wクレンザック継手のバネ部品

👉 左から「金属パーツ」「スプリング」「芯材」「ボール」。この組み合わせにより制動力を調整できます。

小原工業の 8A-001 については、底屈制動力の参考値 が公開されています。

  • スプリングのみ : 0.24 Nm/deg
  • ウレタンゴム(ショアA95)挿入時 : 0.34 Nm/deg

📄 スクエアバネのカタログ
🔗 小原工業 公式ページ

デモ機を使った歩行動画

🎥 Facebook動画リンク


価格比較(2025年現在 完成用部品登録価格)

  • GS(川村義肢 09-SIZE) … 60,600円
  • Wクレンザック K-215-0 … 19,800円
  • Wクレンザック 8A-001 … 18,100円

👉 GSとWクレンザックでは価格差が大きい。
例:GSで長下肢を組むと約244,065円、Wクレンザックなら約193,609円。

長下肢装具の金額シュミレーターもあるので是非試してみてください。


選び方の目安
  • 底屈制動が必須な場面 → GSを選択肢に
  • 制動を使うか迷う場面 → K-215や8A-001を検討

考察:なぜ底屈制動がいいのか?

川副ほか(2022)の研究では、底屈制動タイプ(KAFO-PR)の方が、底屈制限タイプ(KAFO-PS)よりも

  • 荷重応答期の前脛骨筋活動が大きい
  • 単脚支持期が長い
  • 前遊脚期の股関節伸展角度が大きい

ことが報告されています。

研究者らは、底屈制動が衝撃を吸収し、足関節の動きをコントロールすることで前脛骨筋が遠心性収縮を行いやすくなる と説明しています。
一方、底屈制限では動きが出ないため、筋活動が低下することが分かっています。

普段対応しているケースでも、長下肢装具で「遊脚期のクリアランス不足」に困る場面は多くありません。
そのため、まずは底屈制動で設定し、必要に応じて固定(ロッド)に切り替える という考え方が基本に置かれることが多いです。

ただし、尖足や強い底屈緊張がある場合は、底屈制動ではなく固定を選んだ方が望ましいこともあります。カットダウン後に設定変更が必要になるケースも少なくありません。


まとめ

  • KAFOの足継手では、底屈制動の方が前脛骨筋活動を保ちやすく、歩行に良い影響を与える と研究で示されています。
  • 代表的な底屈制動継手には GSWクレンザック(K-215-0 / 8A-001) がある。
  • ただし尖足や強い底屈緊張がある場合は、固定を選択する方が適している場面もある。

👉 そのため、「まずは底屈制動を検討し、必要に応じて固定へ切り替える」 という考え方を、装具設定のひとつの参考にしていただければと思います。

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