【完全解説】義足を作るのにいくらかかる?費用相場・パーツ選び・使える保険まとめ

こんにちは、イカPOです!

今回は、足を切断した後に初めて作ることになる「1本目の義足(訓練用義足)」の費用や値段の相場について解説します。

「義足って一体いくらかかるの?」 入院中、そんな不安を抱える患者さんやご家族は非常に多いです。今回は主に健康保険制度を利用して義足を作るケースを想定しています。

まずは一番お伝えしたい結論(費用の相場)からお話しします。

訓練用義足にかかる費用の目安は、以下の通りです。

  • 下腿義足(膝下からの義足): 40万~70万円
  • 大腿義足(膝上からの義足): 80万~120万円

この金額は使用するパーツによって変動しますが、これより安くなることは基本的にありません。下腿義足なら最低でも40万円以上、大腿義足なら最低でも80万円以上はかかると想定しておく必要があります。

この記事では、以下の疑問について現役の義肢装具士(PO)目線で詳しく解説していきます。

  • なぜその値段になるのか?(義足の価格が決まる仕組み)
  • どんなパーツを選べばいいのか?(パーツ選定の考え方 ※Dr、セラピスト向け)
  • 制作費用に対しての制度はあるのか?(使える制度について)

私個人の見解も含まれますが、義足の費用に対する不安や疑問を少しでも減らせる内容になっていますので、ぜひ最後までお付き合いください!

【義足の費用相場】訓練用義足の値段はいくら?健康保険適用時の注意点と価格の仕組み

下腿義足(膝下からの義足): 40万~70万円

大腿義足(膝上からの義足): 80万~120万円

訓練用義足の費用相場は、以下の通りです。

  • 下腿義足(膝下からの義足): 40万~70万円 
  • 大腿義足(膝上からの義足): 80万~120万円

ここで知っておいていただきたい重要なポイントは、義足の価格がこれより安くなることは基本的にはないということです。

また、訓練用義足は健康保険の適用範囲内ですが、支払いは「償還払い(しょうかんばらい)」という方式になります。これは、病院の窓口などで一度全額を支払い、後から保険者に申請して還付(払い戻し)を受けるという仕組みです。

そのため、一時的な立て替えとして、下腿義足なら最低でも40万円以上、大腿義足なら80万円以上の初期費用が発生することは、あらかじめ想定しておく必要があります。

なぜ義足の値段は決まっているのか?

「もっと安い義足は作れないの?」と疑問に思う方もいらっしゃるかもしれませんが、これには明確な理由があります。

義足の価格は、厚生労働省が定めた以下の公的な基準を元に決定されているからです。

  •  補装具の種目、購入等に要する費用の額の算定等に関する基準
  •  完成用部品の価格

私たち義肢装具製作所が義足の見積もりを作成する際も、自社で自由に価格設定をしているわけではありません。国が決定した公的なリストの中から、患者さんに必要なパーツ等を選択して価格を算出しています。

要するに、国がおおよその価格をコントロールしているということです。

健康保険制度などの範囲内で義肢装具を製作する場合、この価格の決め方は絶対のルールとなります。

参考リンク 補装具の種目、購入等に要する費用の額の算定等に関する基準(厚生労働省) http://mhlw.go.jp/content/11200000/001475318.pdf

完成用部品の価格 令和7年度版(日本義肢装具協会)

https://www.kousaikai.or.jp/wp-content/uploads/2025%E5%B9%B4%E5%BA%A6%E4%BB%A4%E5%92%8C7%E5%B9%B4%E5%BA%A6%E5%AE%8C%E6%88%90%E7%94%A8%E9%83%A8%E5%93%81%E4%BE%A1%E6%A0%BC%E8%A1%A8PDF.pdf

【義足の費用の内訳】値段を左右するのは「完成用部品」選び

義足の総額がどのように決まるのか、結論から言うと「どの完成用部品(パーツ)を選ぶか」によって費用の大部分が決定します。

義足の総額がどのように決まるのか、結論から言うと「どの完成用部品(パーツ)を選ぶか」によって費用の大部分が決定します。

補装具費支給制度など、公的な制度の範囲内で義肢装具を製作する場合、義足の価格は大きく分けて以下の2つの要素の合算で計算されます。

  1. 製作要素(工賃・オーダーメイド部分)
  2. 完成用部品(メーカーから仕入れるパーツ代)

それぞれの内訳について詳しく解説します。

1. 製作要素(オーダーメイドで作るソケットなど)

製作要素とは、端的に言えば私たち義肢装具士(PO)が製作にかける工賃や技術料のことです。

義足において最も重要となる、患者さんが直接足を入れる「ソケット」と呼ばれる部分は、一人ひとりの切断部の形に合わせて完全にオーダーメイドで製作します。このソケットの製作費や、外装の仕上げなどにかかる費用が「製作要素」に該当します。

2. 完成用部品(足部や膝継手などの既製品パーツ)

一方、完成用部品とは、国内外に複数ある義足パーツメーカーから仕入れて、義足に組み付ける既製品のパーツのことです。

現在主流となっている骨格構造の義足では、以下のような部分に完成用部品を使用します。

  • 下腿義足の場合:主に「ライナー」と「足部」
  • 大腿義足の場合:主に「ライナー」「膝継手」「足部」

これらの完成用部品の価格が、義足の総額の中で非常に大きな比率を占めています。

私達のような義肢装具製作所は、オーダーメイドでソケットを作り、そこにメーカーから仕入れた最適なパーツを組み込んで一つの義足を完成させます。

「どんな機能を持った足部を使うのか?」「どんな膝継手を使うのか?」というパーツの選択次第で、義足全体の費用が大きく変わってくるという仕組みです。

義足の用語についての説明はこちらの記事を参考にしてください。

【パーツ選びの基準】義足の部品は「活動レベル(Kレベル)」で決まる

義足に使用するパーツは、価格だけで選ぶわけではありません。ユーザーさんご自身の「活動レベル」によって、最適なパーツが決定されます。

訓練用義足(最初の一本目)を作る段階では、退院後に想定される生活スタイルや活動量を見越してパーツを選定します。

この「活動レベル」を測る際、世界的に広く使われているのが「Kレベル」という指標です。これは、アメリカのメディケア(公的医療保険制度)で採用されている、義足ユーザーの歩行能力や移動機能を分類する基準です。 訓練用義足の場合、多くは「K2」から「K3」レベルを想定してパーツを選ぶことになります。

5段階で分類される「活動レベル(Kレベル)」とは?

活動レベル(Kレベルの表)

活動レベルは、K0からK4までの5段階に定義されています。それぞれの状態とイメージは以下の通りです。

  • K0:歩行不能 義足を使用しても安全に歩行や移乗ができず、自力での歩行能力がない状態(寝たきりなど)を指します。
  • K1:超低活動(屋内歩行レベル) 平らな床の上など、屋内での限定的な歩行が可能なレベルです。歩行だけでなく、ベッドから車椅子への移乗目的で義足を利用するケースもここに含まれます。
  • K2:低~中活動(制限付き屋外歩行) 縁石や階段、不整地などの環境を移動できる能力がありますが、屋外歩行には多少の制限が伴います。 イメージとしては「T字杖」などを使い、簡単なカーブや階段、でこぼこ道を自分のペースでゆっくり歩ける状態です。
  • K3:中~高活動(制限なし屋外歩行) 歩行速度を自由に変えることができ、ほとんどの環境的障壁(路面状況)を乗り越えて屋外を歩行できるレベルです。 イメージとしては、「フリーハンド(杖なし)」で歩き、仕事や趣味など、社会生活のあらゆる場面で義足をフル活用できる状態です。
  • K4:高~超高活動(アスリートレベル) 基本的な歩行能力に加え、高い衝撃やストレス、エネルギーを必要とする激しい活動ができるレベルです。活発な小児や、スポーツをする活動的な成人、アスリートなどが該当します。

【パーツ選びの落とし穴】義足の部品は「値段」ではなく「機能」で選ぶ

高価格=高活動じゃない

義足のパーツを選ぶ際、「値段が高いものほど良いパーツなんだろう」と考えてしまいがちですが、実はそうではありません。

結論からお伝えすると、義足のパーツは価格に惑わされることなく、ご自身の活動度(Kレベル)に対応した「機能」で選ぶことが何よりも重要です。

たしかに、高活動(K3やK4)の方向けのパーツは、激しい動きや強い衝撃に耐えうる機能が搭載されているため、価格が高くなる傾向にはあります。

しかし、「価格が高い=高活動者向け」というわけでは決してないのです。

例えば、価格が比較的安くても高活動に対応できる優れたパーツは存在します。逆に、低活動(K1やK2)の方向けであっても、油圧制御を用いて歩行を安定させるような高度な機能がついている足部などは、非常に高価格になります。

義肢パーツにおける「価格」の考え方

一般的な家電などの市場では、メーカー同士が価格競争をして値段が下がっていくのが普通ですよね。しかし、義肢パーツの市場は一般的な市場とは少し異なっています。

メーカーは顧客を囲い込むために安売り競争をしているわけではなく、「その機能を搭載して安全に提供できる金額」が、そのまま価格として設定されているという認識で間違いありません。 つまり、価格はあくまで製造上の「結果」なのです。高いから無条件に優れているわけでも、安いから機能が劣っているわけでもありません。

だからこそ、与えられた予算の範囲内で「自分が求める生活(機能)に、どうやって到達するか?」を考えること。これこそが、義足のパーツを選ぶ上で最も重要な要素になります。

【パーツ選びの考え方】義足の足部は「車選び」と同じ!値段で選ぶのがNGな理由

義足のパーツ選びは車選びに似ています。

義足のパーツを選ぶ時の考え方は、ズバリ「車を選ぶ時と同じ」です。 ご自身の活動度に合っていない足部を、単に「値段」を理由に選ぶことだけは絶対に避けてください。

なぜ義足のパーツ選びが「車選び」と同じなのか?

車を購入する時、自分のライフスタイルに合わせて車種を選びますよね。

  • 住宅街の細い道や街乗りがメインなら「軽自動車」
  • 家族をたくさん乗せて遠出するなら「ミニバン」
  • 高速道路をとにかく早く、楽に走りたいなら「スポーツセダン」

大きなミニバンで狭い路地を走るのが大変だったり、軽自動車で長距離ドライブをすると疲れやすかったりするはずです。

義足もこれと全く同じです。 低活動向けのパーツで無理に走ろうとしたり、逆にスポーツ用の硬いパーツでゆったりとした日常生活を送ろうとしたりすると、思い通りに動けず体への負担が非常に大きくなります。だからこそ、ご自身の「活動度」にぴったり合ったパーツを選ぶことがとにかく重要になります。

活動度に合わないパーツを値段で選ぶ危険性

活動度に合わない足部は、破損の原因になる。

高活動まで対応できる機能的なパーツは、低活動向けに比べるとどうしても価格が高額になる傾向があります。 しかし、「費用を抑えたいから」という理由で、よく歩く高活動の方が低活動向けのパーツを選択するのは大変危険です。

なぜなら、日々の活動量や体重の負荷にパーツが耐えきれず、破損の原因に直結するからです。義足は、一度破損してしまうと修理に時間がかかり、その間は歩行できなくなってしまいます。目先の価格に惑わされず、ご自身の活動に耐えうる機能性を優先してください。

担当チームと相談して決めることが一番の正解

ここまで解説してきましたが、義肢のパーツ選びに「絶対的な正解」は存在しません。私たち義肢装具士(PO)の中でも様々な考え方があり、それぞれのアプローチでパーツ選びをサポートしています。

今回お伝えしたのは、あくまで私、イカPO個人の考え方の一例です。 実際にパーツを決定する際は、ご自身の体の状態や目標を一番よく把握している、担当の医師(ドクター)や理学療法士(セラピスト)、そして担当のPOの意見をしっかりと聞き、納得いくまで相談しながら決めるようにお願いします。

義足製作に使える公的制度と保険について

義足の費用が高額になることはお伝えした通りですが、全額を自己負担し続けなければならないわけではありません。製作するタイミングやケガの原因によって、様々な制度を利用することができます。

ここでは、義足を作る際に使える代表的な制度を「入院中(治療中)」と「退院後(治療終了後)」、そして「自動車事故の場合」に分けて解説します。

補装具費支給制度についてはこちらの記事でまとめています。

1. 入院中・リハビリ中に作る「訓練用義足」の制度

治療の一環として最初に作る訓練用義足は、主に以下の制度が適用されます。

  • 健康保険制度(一般的な病気やケガ) 訓練用義足は健康保険の範囲内です。ただし前述の通り「償還払い」方式となるため、一旦は全額を支払い、後からご自身が加入している保険者に申請して還付を受けるのが一般的です。
  • 労災保険(お仕事中のケガなど) 仕事中や通勤中の事故が原因の場合は、治療終了まで労災の治療制度の範囲で行われます。こちらも基本的には一旦全額を支払い、後から還付を受ける形での労災適用になります。

治療用装具、および訓練用義足の制度についてはこちらの記事でも解説しています。

2. 退院後・治療終了後に作る「更生用義足」の制度

治療が一段落し、日常生活や社会復帰のために新しく作る義足(更生用義足)については、利用する制度が切り替わります。

  • 障害者手帳の制度(補装具費支給制度) 治療終了後、役所の福祉窓口などに申請し、各都道府県にある「更生相談所」の判定を受けることで、障害者手帳の制度を利用して更生義足を製作することができます。
  • 労災の補償制度 労災が適用されている方の場合は、治療終了後も労災の補償制度を使って更生用義足を製作します。こちらは労災へ申請して製作を進めます。

本義足の制作方法については、こちらの記事でもまとめています。

3. 自動車事故などが原因の場合の優先順位

交通事故(自動車事故など)で足を切断することになった場合は、対応が異なります。

  • 自動車保険が「最優先」される 補装具費支給制度などの公的な制度よりも、自動車保険の補償が最優先して適用されます。病院での治療を自動車保険でおこなっている場合は、基本的に義足の費用も自動車保険へ請求することになります。
  • 保険会社とのやり取り・確認が必須 治療終了後に作る更生用義足についても、引き続き自動車保険の範囲内で製作するのか、それとも別の制度を使うのかは、保険会社との交渉で決定します。この辺りは専門的なやり取りが必要になりますので、必ず保険会社の担当者に確認するようにしてください。

【まとめ】義足の費用相場とパーツ選びのポイント

今回は、切断手術後からリハビリにかけて最初に作る「訓練用義足」の費用相場や、価格が決まる仕組み、パーツ選びの考え方について解説しました。

この記事の重要なポイントを振り返ります。

  • 訓練用義足の費用相場は「下腿義足で40万~70万円」「大腿義足で80万~120万円」
  •  価格は国の基準で決まるため、相場より極端に安くなることはない
  •  費用の支払いは、基本的に「一時的な立て替え払い(償還払い)」が必要になる 
  • 義足の総額は「完成用部品(足部や膝継手などのパーツ)」の選択によって大きく変わる
  • パーツは「値段」ではなく、ご自身の「活動度(Kレベル)」に合わせて選ぶことが最も重要  
  • 健康保険、労災、障害者手帳、自動車保険など、ご自身の状況に応じた制度を正しく活用する

義足の費用は決して安いものではありません。しかし、再び歩き、これからの生活を支えてくれる大切なパートナーを手に入れるための費用でもあります。

パーツ選びや制度の利用について、ネットの情報だけで「これが絶対に正解だ」と決めるのは非常に難しい部分があります。この記事で義足の仕組みや費用のイメージを掴んでいただいたら、次はぜひ、ご自身の体の状態や目標を一番よく知っている担当のドクター、セラピスト、そして私たち義肢装具士(PO)に、不安なことや希望をどんどん伝えてみてください。

しっかりとチームでコミュニケーションを取りながら、ご自身の活動度やこれからの生活スタイルにぴったりの義足を一緒に作っていきましょう!

義足の用語解説についてはこちらの記事も参考にしてください。

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