脊髄損傷レベル別装具早見表|AISA Key Muscleで整理する国家試験対策
こんにちは、イカPOです。
今回は 義肢装具士(PO)を目指す学生向け に、脊髄損傷と装具の関係を整理してみました。
もともとは旧ブログで 国家試験対策用 にまとめた内容ですが、
最新の視点を踏まえて再編集しています。
脊髄損傷のレベル別に「どの動作が可能か?」「どんな装具が適応になるのか?」というテーマは、
PO国試でも毎年のように出題される重要分野です。
とはいえ、レベル別に整理された一覧資料は意外と少なく、
私自身も学生の頃に「まとまった資料が欲しい…」と思った経験があります。
そこで今回は、脊髄損傷のレベルごとに対応する装具・補装具・車椅子などを一覧化しました。
学習の確認や国家試験対策の参考にしてもらえれば嬉しいです。
本記事は、義肢装具士国家試験の過去問題を基に自分なりに解釈してまとめたメモです。
臨床での装具選定や治療計画には、個別の症例に基づいた専門的な知識と判断が必要です。
損傷レベルの定義と意味
脊髄損傷の「C5損傷」とは、実際にはC6レベルが損傷していることを意味します。
これは「一番下位で残っている髄節」を指すためです。
損傷レベルの理解は、適切な装具選定の基礎になります。
AISA(American Spinal Injury Association)による Key Muscle の考え方
脊髄損傷の評価では、AISA(アメリカ脊髄損傷学会)による国際基準が用いられます。
AISA分類(AIS スケール)は、感覚レベルと運動レベルをそれぞれ評価し、損傷の完全/不完全を判定します。
ここで使われるのが「Key Muscle(主要筋)」で、
各レベルの神経支配を代表する筋肉を指します。
この主要筋の筋力(0〜5段階)を評価することで、残存機能やADL自立度の予測が可能です。
🔹 Key Muscle 一覧 (AISA基準)
| レベル | Key Muscle(主要筋) | 主な動作 | 評価ポイント |
|---|---|---|---|
| C5 | 上腕二頭筋(肘屈曲) | 肘を曲げる | テノデーシス前段階 |
| C6 | 長橈側手根伸筋(手関節背屈) | テノデーシス把持 | 手関節駆動型装具に重要 |
| C7 | 上腕三頭筋(肘伸展) | プッシュアップ・移乗 | 自走・起立支援の転換点 |
| C8 | 指深屈筋(DIP屈曲) | 握力の回復 | ナックルベンダー適応確認 |
| Th1 | 小指外転筋 | 精密動作 | 手内筋機能の確認 |
| L2 | 腸腰筋(股屈曲) | 立ち上がり | 長下肢装具の安定性に関与 |
| L3 | 大腿四頭筋(膝伸展) | 膝立ち | KAFO → AFO 移行の目安 |
| L4 | 前脛骨筋(足背屈) | つま先上げ | 背屈制限 AFO の適応判断 |
| L5 | 長母趾伸筋(母趾背屈) | 足趾制御 | 下垂足評価に使用 |
| S1 | 腓腹筋(足底屈) | つま先立ち | 装具不要移行の指標 |
この「Key Muscle」と損傷レベル別装具の適応を対応づけて整理しておくと、
国家試験では「動作と筋の関連づけ問題」に強くなります。
(例:「テノデーシスが可能になるレベルは?」→ C6)
C1〜C3損傷
主要筋/動作
- 僧帽筋・胸鎖乳突筋がわずかに動く(C2〜C3)
- 四肢完全麻痺、呼吸筋麻痺 → 自発呼吸不可
適応装具・機器
- 人工呼吸器(必須)
- 環境制御装置(EADL:音声・視線入力)
- 食事支援ロボット(介助併用)
C4損傷
主要筋/動作
- 横隔膜の動きにより自発呼吸可能(肺活量 45 %程度)
- 僧帽筋がかろうじて動く
- 四肢は完全麻痺
適応装具・機器
- 人工呼吸器(必要に応じて)
- 電動車椅子(チンコントローラー/マウススティック)
- 食事支援ロボット(食事自立可)
- BFO/PSB(肩肘保持装具)
C5損傷
主要筋/動作
- 肩屈曲(三角筋前部)
- 肘屈曲(上腕二頭筋)
適応装具・機器
- 電動車椅子(標準)
- 簡易自走車椅子(平地限定)
- トランスファーボード(直角移乗可)
- BFO/PSB
- 肩駆動式把持装具・手関節固定装具
ADL
- 食事:BFO+把持補助で自立可
- 更衣:上衣のみ一部可
- 排尿:男性→自己導尿可
- 排便・入浴:多介助
C6損傷
主要筋/動作
- 手関節背屈(ECR)→ テノデーシス把持が可能
適応装具・機器
- 把持装具(手関節駆動式)
- 対立装具(母指対立制御)
- 車椅子(通常型/電動)
- トランスファーボード
- 座位クッション(ロホ+ティルト)
ADL
- 更衣:上着自立可
- 排尿:女性も自己導尿可(開唇器併用)
- 排便:補助具併用で一部自立
C7損傷
主要筋/動作
- 肘伸展(上腕三頭筋)→ プッシュアップ可能
適応装具・機器
- 対立装具/把持装具
- 通常型車椅子(屋内外自走)
ADL
- 更衣・排泄:ほぼ自立
- 入浴:設定次第で自立
- 自動車運転:可(車椅子積載含む)
C8損傷
主要筋/動作
- 指屈筋(上肢機能ほぼ回復)
- 内在筋麻痺 → 鷲手変形
適応装具・機器
- ナックルベンダー(MP過伸展防止)
- 通常型車椅子
ADL
- 食事・更衣・排泄:完全自立
- 移乗・入浴:自立可能
Th6〜Th10損傷
主要筋/動作
- 胸筋群により体幹安定(腹筋は未発達)
適応装具・機器
- 骨盤帯付き長下肢装具(KAFO)+松葉杖
- 通常型車椅子(背もたれ短縮)
補足
- 肺活量:Th10 で約 100 %回復
Th12損傷
主要筋/動作
- 背筋・腹筋使用可 → 体幹完全安定
- 腸腰筋・大臀筋は弱い
適応装具・機器
- 両長下肢装具(KAFO)+松葉杖
- HKAFO(HGO/RGO/ウォークアバウト等)
- スコット・グレイグ装具
L2〜L4損傷
| レベル | 主筋群 | 主な装具 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| L2 | 股関節屈筋 | 長下肢装具(KAFO) | Cポスチャーで立位安定 |
| L3 | 膝伸筋(大腿四頭筋) | 短下肢装具+杖 | 実用歩行可能 |
| L4 | 足関節背屈筋 | 背屈制限 AFO | 踵足傾向あり、背屈制限が必要 |
S1〜S5損傷
主要筋/動作
- S1:足関節底屈筋
- S4〜S5:肛門周囲感覚
適応装具
- S1 以降:装具不要
まとめ
この記事では、脊髄損傷のレベル別に適応する装具と機能回復を整理しました。
国家試験では「どのレベルで何ができるのか」を把握しておくことが重要です。
AISAのKey Muscleと対応する装具を関連づけて覚えることで、
解答スピードが格段に上がります。
ただし、再度強調しますが、これは国家試験対策メモであり、臨床での判断には使えません。
実際の現場では患者個々の状況に合わせた選定が必要です。
一方で、損傷レベルと装具適応を「予測」できるようになることは、
装具設計・提案の精度を高める第一歩でもあります。
学習段階では、
「C6 = テノデーシス」「Th12 = 体幹安定」「L3 = 膝伸展」
といった関連を意識しながら整理しておくと、
試験でも臨床でも活きる知識になります。
参考書籍
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