こんにちは、イカPOです。
今回は義足の膝継手に搭載されている「バウンシング機構」について解説します。
義肢装具士が「この膝継手はバウンシングが~」と早口でうれしそうに語っているのを聞いたこと、ありませんか?
今日はその「バウンシング」、つまり立脚初期に膝が軽く屈曲するという機能の正体を整理してみましょう。
🔹そもそもバウンシングとは?

バウンシング(Bouncing)機構とは、踵が接地した直後に膝継手がわずかに屈曲するよう設計された仕組みのことです。
バウンシング機構の効果

踵が接地すると、膝がほんの少し屈曲します。
このわずかな屈曲によって――
- 体重心の上下動が小さくなる
- 歩行中の衝撃を吸収できる
- 結果としてエネルギー消費を抑えられる
という効果が得られます。
バウンシング機構の義足歩行での役割
健常者の歩行では、踵接地直後に自然な膝の軽度屈曲が起こります。
バウンシング機構付きの膝継手は、この生理的な動きを人工的に再現することで、
より自然で安定した立脚初期を実現します。
構造的な特徴

バウンシング機構を持つ膝継手では、立脚初期に膝関節の瞬間回転中心が上方かつ後方に移動するよう設計されています。
これにより――
- 膝折れを防ぎながら体重支持が可能
- 歩行時の上下動を抑え、省エネルギー化
といったメリットが得られます。
補足情報 :イールディング機構との違い
「イールディングとの違いは?」とよく聞かれるので、ここで簡単に答えておきます。
イールディング機構は、下り坂や階段などで体重を受け止めながら、膝がゆっくり屈曲して減速する仕組みです。
立脚中期から終期にかけて働き、主に姿勢を安定させるための制御機構といえます。
一方で、バウンシング機構は踵が接地した瞬間(立脚初期)に軽く屈曲して衝撃を吸収し、歩行をスムーズにする機能です。
つまり、動作のタイミングも目的もまったく異なるわけです。
👉 イールディングは「減速・制御」のための機構。
👉 バウンシングは「衝撃吸収と安定化」のための機構。
どちらも歩行の安定に寄与しますが、イールディングは“下り坂対策”、バウンシングは“歩き出しの自然さ”を目的としていると、イメージしやすくなります。。
バウンシング機構搭載の個人的に紹介したい膝継手3選
ここからは、私が個人的に紹介したい「バウンシング機構が印象的だった膝継手」を3つ紹介します。
① NK6

六軸油圧膝継手。バウンシング機構+油圧制御+二重ロック機構を兼ね備えた高機能モデルです。
リンク機構によるP-MRSロックで膝折れを防ぎつつ、立脚初期に軽度の屈曲(バウンシング)を実現。
長断端対応のスクリューヘッドも選択可能で、安全性と歩行快適性の両立が魅力です。
💬 推しポイント:
高機能ながら調整幅が広く、断端長や活動度を問わず提案しやすい万能タイプ。
特に手動ロック切替ができる点が推しポイントです。
② SL0708 Beluga

低活動者向けの手動ロック膝+バウンシング機構付きモデル。
立脚初期の膝屈曲を再現し、ロック状態でも自然な歩行感を得られます。
訓練を重ねると、ロック膝でも驚くほどスムーズに歩行できるユーザーも。
💬 推しポイント:
ロック膝の安定感とバウンシングの柔らかさを両立できる、意外と希少な構成。
安全性重視の方に特におすすめです。
③ 3R62 Pheon

EBS(Ergonomically Balanced Stride)を搭載した多軸膝継手。
立脚期の軽度膝屈曲(=バウンシング的動き)を再現し、荷重ブレーキ+伸展補助バネで滑らかな歩行を実現します。
長断端にも対応可能で、ロックアンロック機構もオプション搭載可。
💬 推しポイント:
日本版カタログにはなぜか未掲載ですが、完成用部品には登録済み。
機能性の割に価格が抑えられており、コスパが非常に高い印象です。
まとめ
バウンシング機構は、踵接地後の立脚初期に膝を軽く屈曲させることで、
体重心の上下動を抑え、エネルギー効率のよい安定した歩行を実現します。
義足歩行者にとって、より自然でスムーズな歩行を支える重要な機能です。
そしてその機能を最大限に活かす膝継手として、NK6・Beluga・3R62の3機種は非常に魅力的な選択肢といえます。
個人的に紹介したい膝継手3選の情報はこちらの記事でも紹介しています。


