両側支柱の短下肢装具は 足継手・あぶみ・足部 の 3 要素を基本に、T・Y ストラップや足背バンド、補高などの追加パーツを組み合わせて設計します。
本記事では、これら 構成要素の役割と選定ポイント、そして 私が現場で採用している代表的な仕様 をまとめました。最後に「○○という要望ならこのパターン」という提案例もいくつか紹介します。仕様決定のヒントとしてご活用ください。
ケースニーズ別・仕様パターン早見表
| ケースイメージ | 足継手 | あぶみ | 足部 | 追加要素 | ひと言ポイント |
| 底屈をしっかり固定/制限したい(例:術後早期、尖足強め) | K-215-0(ロッド固定) | K-217 S | 靴型 or 足部覆い型 | ― | 底屈固定・背屈フリーなど可変。まずはこの定番から検討 |
| 底屈に“バネ”で一定の制動が欲しい(例:軽度尖足、復帰期) | K-215-0 + 強バネ | K-217 or K-217 S | 靴型 or 足部覆い型 | ― | ロッド⇔バネの交換で固定⇔制動へ切替え可能 |
| 強力 or 無段階に制動を調整したい(例:下腿筋トーヌス変動大) | GS 足継手+ K-215 | K-217(ケースにより S) | 靴型 or 足部覆い型 | ― | GS の油圧で底屈制動を微調整。長下肢装具からのカットダウンにも◎ |
| 底屈と内反を同時にコントロールしたい(例:尖足内反タイプ) | K-215(ロッド) | K-217 S(ロング) | 靴型 or 足部覆い型(チャッカ推奨) | T・Yストラップ/足背バンド/補高 | ロッド + ロングシャンクで底屈抑制、Tストラップで内反矯正 |
使い方
- 上表でケースに近いニーズをざっくり把握
- 次章から各パーツの選定ポイントを確認し、微調整していきましょう
短下肢装具を構成する3要素(足継手・あぶみ・足部)
両側支柱の短下肢装具は 足継手・あぶみ・足部 の 3 要素を軸に、必要に応じてストラップ類や補高を追加して設計します。ここでは各要素と、私が現場で採用している代表的な型番・選定ポイントを整理します。
足継手の種類と選定ポイント
GS(ゲイトソリューション)

油圧機構により底屈方向の無段階制動が可能です。筋緊張や症状変化に合わせて微調整できるため、底屈制動の強さを細かく合わせたいケースで最優先候補にしています。K-215 のロッド固定と併用すれば「制動 → 完全固定」まで幅広く対応できます。
K-215 シリーズ(通称「W クレンザック」)

K-215 シリーズは、ロッドとバネを入れ替えることで底屈・背屈の両方向を〈固定〉と〈制動〉から選択できる足継手です。なかでも K-215-0 はバネ径が大きくウレタン芯材入りで、他品番より強い底屈制動が得られるため、両側支柱短下肢装具で制動を重視する際に採用することが多いモデルです。
長下肢装具では膝継手に K-111(リングロック) を用いるケースが多く、その流れで足継手にも K-215 シリーズを採用することがあります。
バネによる底屈制動を導入するときは、K-215-0 だけでなく 小原工業 8A-001 + スクエアバネ を組み合わせる場合もあります。
バネ制動の動きは下記動画が参考になります。小原工業さんのインスタです。
参考リンク(小原工業スクエアバネ)
http://www.obara-kogyo.jp/product/%E3%82%B9%E3%82%AF%E3%82%A8%E3%82%A2%E3%83%90%E3%83%8D/
あぶみ(シャンク)—ロング or ショートの使い分け

ロングシャンクかショートシャンクで選択します。
- ロングシャンクは装具内で足部の底屈を抑え、尖足傾向が強い症例や足部の安定性を重視したい場合に適しています。
- 対してショートシャンクは軽量で足長の短い患者にも合わせやすく、底屈抑制より装着性や重量を優先するケースで選択します。症例の優先事項(底屈制御か軽量化か)を確認し、同じあぶみ形状の長短を使い分けるイメージです。
足部タイプ別の特徴と選び方
足部は3 パターンから、使用環境・補高の有無・重量などを踏まえて選択します。
足部覆い型(トゥーオープン)

つま先が開いており着脱が容易。室内中心の使用や、チャッカ靴程度のアッパー高さがあるため インソール補高との相性が良い のが特長です。
靴型(短靴/チャッカ)

屋外での耐久性が高く、歩行距離が長い方に適します。アッパーの高さに応じて短靴かチャッカを選択します。
プラスチック型

シューホーンと両側支柱の長所を合わせ持つハイブリッド仕様。屋内外どちらも使える汎用性が強みですが、重量増と靴選択肢の制限に注意が必要です。
T・Yストラップ・補高など追加パーツの役割
T・Y ストラップ

足関節の内反・外反を矯正するストラップです。
T・Yストラップについての解説はこちらで。
足背バンド

尖足に対し足背を押さえて底屈を抑制します。
補高(内補高/外補高)

踵接地が難しいケースで高さを調整し、左右バランスを補正します。
捕高ついてはこちらの記事も参考に
ケース別|短下肢装具の仕様パターン4選
足関節の底屈・背屈をどのようにコントロールするかで、短下肢装具の仕様は大きく変わります。代表的な 4 パターンを整理しました。症例の目的に合わせて、ここから組み立ててください。
1. 底屈を固定したい場合
- 足継手:K-215-0(底屈ロッド固定)
- あぶみ:K-217S
- 足部:靴型 / 足部覆い型
底屈・背屈を足継手だけで制御する定番構成。底屈を完全固定しつつ、背屈はフリーまたは軽く制限—など調整幅が広いのが特徴です。足部は屋外使用か室内中心かで選択します。
2. 底屈に一定の制動を与えたい場合
- 足継手:K-215-0(強バネ仕様)
- あぶみ:K-217 または K-217S
- 足部:靴型 / 足部覆い型

バネで底屈方向に一定の抵抗をかけるパターン。必要に応じてバネ → ロッドへ交換し、制動を固定に切り替えることも可能です。背屈を遊動にしておくとヒールロッカー〜アンクルロッカーを阻害しません。
3. 底屈を強力に制動(無段階調整)したい場合
- 足継手:GS 足継手 + K-215
- 足部:靴型 / 足部覆い型
GS 足継手の油圧で制動力を細かく調整でき、K-215 を併用すれば固定までカバー可能。新規製作はまれで、長下肢装具をカットダウンした際や強バネ仕様からの乗り換えで採用することが多い構成です。
4. 底屈と内反を同時に制御したい場合
- 足継手:K-215(ロッド仕様)
- あぶみ:K-217S(ロングシャンク)
- 足部:靴型 (チャッカ靴)/ 足部覆い型
- 追加:T・Y ストラップ、足背バンド、補高(必要時)
ロッドとロングシャンクで底屈を抑え、T ストラップで内反を矯正する組み合わせ。底屈制御を強めたいときは足背バンドを追加し、踵浮きが出る場合は補高を行います(左右のバランス調整を忘れずに)。
内反対策についてはこちらの記事でも
まとめ:短下肢装具の構成と仕様選定のポイント
今回は短下肢装具の構成要素と代表的な仕様パターンを紹介しました。ここで取り上げたのは、私が現場で遭遇するケースに合わせた一例にすぎませんが、装具選定のヒントとしてお役立ていただければ幸いです。
長下肢装具についてもこちらの記事で解説しています。
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